アニマル・ウェルフェアの良質な畜産品を取り入れる一方、お肉を食べる量を減らしていくというライフスタイルを紹介します。
ポール・マッカートニーのMeat Free Monday
音楽家でベジタリアンのポール・マッカートニーさんらが提唱しているMeat Free Mondaysという運動があります。
週のうちに一度は、肉を食べない日を作ってみようというものです。
肉の摂取量を減らすことで、家畜にも、人の健康にも、自然環境にも優しくなれると伝えています。
スローフードが提唱する”Eat Less Meat; Better Meat”
スローフードでは”Eat Less Meat; Better Meat”という言葉で説明しています。「より自然に育った動物の肉を、より少量食べましょう」というものです。
“Slow Meat: Eating Less, but Better” by Slow Food London
スローフードでは、”Slow Meat”を提唱していて、抗生物質や成長ホルモンなどに依存せず、より自然な状態でのびのびと飼育された家畜の肉を食べるように勧めています。ですから、たとえ高価でも、自然界ではあり得ない程太らせた霜降り牛や、強制給餌で作られるフォアグラなどは”Better Meat”には含まれません。
お肉ってもともと高いもの
戦前の日本を振り返れば、畜産品はそもそも高級品で、庶民が日常的に食べられるものではありませんでした。お肉が安価で大量に手に入るようになったのは、1960年代以降、工業的畜産(Factory Farming)が普及してからで、ごく最近なのです。
食肉の生産のためには最低でも、鳥は2ヶ月、豚は6ヶ月、牛は2年半という長期にわたって沢山の餌を与え続ける必要があります。ですから、畜産品が高価なのはむしろ理にかなったことです。逆にあまりに安価なのは、どこかが不自然なのだといえます。
精製度の低い穀類と豆を食べ合わせると、良質なタンパク質が得られる
栄養学ジャーナリストの故・丸元淑生先生は、1994年に記した「丸本淑生のクック・ブック」の中でバランスの取れた食事のヒントとして下記のことを揚げています。
「世界各地の伝統食では、肉や魚、家禽が料理に使われてきた量は、われわれの想像をはるかに超えて少ない。先進諸国でこのグループが多量に食べられるようになったのは、この数十年のことなのである。」
世界のさまざまな文化圏の伝統的な食事に共通するのは、穀類と豆の組み合わせでタンパク質を食べていることです。穀類(特に精製度の低いもの)と豆を組み合わせることで、肉と変わらない理想的な割合で必須アミノ酸を摂ることができるといいます。
「わが国では米と大豆(豆腐、納豆、おからなど)の組み合わせが食事の核になっていた。それに多種類の野菜と魚介類を食べ合わせることで、家庭料理が成り立っていたのである。」
肉がなくても満たされる食事は、日本を始め各国の伝統食に学べということですね。20年以上前に書かれた本ですが、現代においても道標になります。
お肉の消費量が世界ダントツ(世界平均の3倍)のアメリカでも、お肉を減らす動き
Slow Food USA事務局長のRichard McCarthyさんは、ラジオ番組で次のように話しています。
「私たちの食体系における誤りの核心は、規模や効率やスピードへの執着です。また、厚切りの肉がプレートの真ん中にあって、野菜という脇役で囲まれているべきだという全く古い観念です。
私たちは、家畜が動物らしく生きて、化学物質漬けになっていない、よりよい肉を食べるという地点に到達しなければなりません。
そして、肉を食べる量を減らすのです。
肉が毎回の食事の中心ではなく、いわば香り付けのようなものだと、どうしたら考えられるのか学ばなければいけません。
それはもちろんアメリカ人にとっては全く新しい考えです。
しかしだからこそ面白いのは、移民社会のもたらす新しい考えが、私たちがどうやって食べるか、どのように今までとは違った方法で食事を組み立てるかをリシェイプし始めていることです。」
中南米を始め、インドや中近東など、豆を使った伝統食は様々にあります。そうしたものをヒントに食事を組み立てることで、肉がなくても十分にバラエティーに富んだ美しい料理を楽しむことができるということですね。
“Eat Less Meat; Better Meat”でサステイナブルなライフスタイルを楽しもう!
日本でも、近代化と工業化の急速な発展と共に、1960年代頃から安価なお肉を大量に消費する食文化に慣れ親しんできました。
恩恵があった一方で、食生活を一因とする生活習慣病が蔓延して死因の首位を占めるようになったり、遺伝子組み換え作物など安価で大量の穀物飼料に依存する家畜の生産が、地球環境に負荷となったりするなど、問題も浮かび上がってきています。
日本の将来の食のあり方として、お肉との新しい付き合い方を考えてみませんか。欧米ではもう無視できない潮流になっています。
アニマル・ウェルフェアの良質な畜産品を選ぶ一方、お肉を食べる量を減らしていき、サステイナブルで自分もコンフォタブルな食のスタイルを見つけてみませんか。