畜産品のオーガニック(有機)認定基準の重要な項目の一つがアニマル・ウェルフェアへの配慮です。
農林水産省が定める有機畜産物のJAS規格では、家畜の餌が農薬や遺伝子組み換え作物を使用していないこと等の他に、アニマル・ウェルフェア5つの自由への配慮が明示されています。
5つの自由/Five Freedoms
1. 「飢えと渇きからの自由」
2. 「不快からの自由」
3. 「痛み、傷、病気からの自由」
4. 「正常行動発現の自由」
5. 「恐怖や悲しみからの自由」
「有機畜産物の日本農林規格」より一部抜粋。
「家畜が飼料及び新鮮な水を自由に摂取できること。」
「畜種、品種及び年齢に配慮した十分な容積を有する構造とし、(……)家畜1頭当たり(…別表…) の面積以上の面積を有すること。」
「家畜又は家きんが傷病に罹患した場合、必要に応じて隔離し、迅速に治療すること。」
「動物用医薬品の使用は、治療目的に限ること。」
「成長又は生産の促進を目的とした飼料以外の物質を給与しないこと。」
「家畜及び家きんを野外の飼育場に自由に出入 りさせること」
「と殺は、できる限り家畜又は家きんを意識の喪失状態にし、当該家畜 又は家きんの緊張及び苦痛を最小限にする方法で行うこと。」
戦前や戦後までは、日本でも欧米でも、アニマル・ウェルフェアなどとわざわざ論ずる必要はありませんでした。家畜は農業を補助する貴重な存在として、農家で飼われていました。鶏の糞を堆肥にしたり、牛に鍬をひかせて畑を耕したりしていたのです。
やがて畑の力仕事は機械にとって変わり、家畜は農家から姿を消します。1960年代頃から世界的に、家畜は畜舎で多頭飼育され、安価に大量の卵や牛乳、肉などが供給されるようになりました。工業的畜産(Factory Farm)の始まりです。
初めて懸念が示されたのは、1964年にイギリスのルース・ハリソン(Ruth Harisson)氏の「アニマル・マシーン(Animal Machine)」です。家畜の飼育が、消費者の目の届かない畜舎の中に移り、家畜に「人間の食料の換算率」しかみないことで、非人道的と指摘されるような扱いが発生するようになったのです。
アニマル・ウェルフェアやオーガニックの畜産とは、ほんの50年前の方法に戻るだけのことなのかもしれません。